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2012-10-03 アレとソレ

 仕事の途中、フラリと立ち寄った定食屋で昼食などを摂っておりますと、スーツを着た三人組の男性の会話が耳に入ってきまして、その中の一人が『最近、うちの部署の渋山さん(仮名)と会話をしていても“アレ”“アレ”ばっかりで、何が言いたいのか良く分からねぇときがあるんだよねぇ』と愚痴をこぼしておりました。

 なるほど、確かに、会話をするときに具体的な単語が出てこなくて“アレ”“アレ”と言ってしまう、そんなことって、ありますよね。私は無いですけど。

 普通なら突っ込んで笑い話にでも出来るのでしょうが、彼の愚痴のこぼし方を見ていると、どうやら、渋山さん(仮名)の症状はかなり酷いようで、笑い話では済まされない、そんな雰囲気を感じました。
 きっと、仕事の大事な話をしているときに「例のアレ、アレがアレして、アレだから」などと言われてしまうのでしょう。私も話をするときには気をつけなければならないな、と、そんなことを考えながら、サバの味噌煮定食を平らげたわけですが、そのとき、ふと重要なことに気が付きました。
 ええ、そうなんです。よく考えたら、サバの味噌煮定食は先週も食べたのですよ。今日はサンマの焼き魚定食にしておけば良かった。

 さて、お店を出て駅に向かっておりますと、私の前を大学生くらいのカップルが手をつないで歩いておりまして、なにやら楽しそうにお話をしております。
 決して人の会話に聞き耳を立てているつもりは無いのですが、徹夜明けということもあり、妙にテンションが上がっている状態ですと、やたらと感覚が鋭くなった気がしてくるわけでして、そうすると、周りの人々の会話などもやけに頭へ入ってくるのです。

 ──いまの俺の精神は、刃物のように極限まで研ぎ澄まされた状態。まるで、風の流れさえもが、俺の目には映って見えるようだった。

 と、まぁ、油断をしているといつものように始まってしまうので気をつけなければならないのですが、どうやら彼女のほうが彼氏にプレゼントを買ってあげる、そのような流れになっているらしく、「何か欲しいもの、ある?」と可愛らしく訊ねている姿なんぞを見せつけられては、もう、なんていうか、アレですな。ムキーーッ!!

 ちなみに、私には「いま、何が欲しい?」などと質問してくれる人も居ないので勝手に回答をしてみますと、今は《打撃マン》が、まぁまぁ欲しいです。
 《打撃マン》と聞いて「ああ、アレね」と直ぐに解る人は結構アレだと思いますので、そんな人、個人的には嫌いじゃないのですが、そういう人とというのは世間的にはアレな部類に入るでしょうから、なかなか普通の人々には理解されにくい、そんな世界になってくるかと思います。

 《打撃マン》とは、端的にいうと、人の形をしたサンドバック、ということになりますが、これがまた、非常に不気味なフォルムをしておりまして、例えていうなら、そう、《アイアンメイデン》という拷問器具、あんな感じでしょうか。

 コレがあれば事務所の中でも打撃の練習が心置きなくできますが、こんなモノでドタバタやっていたら近所迷惑になりそうだし、そもそも、こんなモノを部屋に入れたら物凄く邪魔だし、欲しいけど、なかなか買う気がおきない、そんな一品。

 ところで、私の過去を振り返ってみますと、同じように《欲しいけどなかなか買う気がおきない一品》というのが多々あったわけですが、その中の商品の一つに《デュラシャイン》というものがあります。
 これを見て「ああ、アレね」と直ぐに解ったアナタは結構な通販マニア。かなり以前、夜中にテレビで外人が宣伝していたアイテムです。
 この商品、車のコーティング剤なのですが、これを車に塗ると《レーザー光線をも跳ね返す》という、素晴らしいものなのです。
 はたして、そこまでの効力が単なる車のコーティング剤に必要なのかどうか疑問ではありますが、そんなことをいちいち考えてたら、人生面白くありません。私は良く考えたので、こんなもの買いませんでしたけど。

 ジョン「どうだいニック。コイツを・・・こう・・すると・・・」
 ニック「ウワァーオゥ!!コイツはすげぇや!!ハッハーッ!!!」

 このように、デュラシャインの効果で車体がレーザー光線から保護されている様子を実演するわけですが、出演者たちの派手なリアクションにより、否が応でも購買意欲は刺激されます。

 昔はデュラシャインだけではなくモーターアップやGT88といった車用の商品がテレビ通販で紹介されることが多かった気がします。ところが最近はトンと見かけなくなりましたね。《車が売れない》、そんな世相が、このようなところにも現れているのかもしれません。

 ちなみに、モーターアップというのはエンジンオイルの添加剤でして、《例え凍ったエンジンでもコレを入れると始動する》といったようなことを謳っておりましたが、実演では氷で出来た囲いの中にエンジンが置いてあるだけで、決してエンジン自体が凍ってしまっているわけではありませんでした。そんな肝心なところには誰も突っ込まずに

 ジョン「どうだいニック。コイツを・・・こう・・すると・・・」
 ニック「ウワァーオゥ!!コイツはすげぇや!!ハッハーッ!!!」

 と、商品紹介が進められていくわけです。

 一方、GT88は車体についた傷を簡単に消すことが出来る、という触れ込みの商品。それが本当であれば、車のオーナーからしてみたら正に画期的なアイテム。
 ところがこの商品の場合、どういったメカニズムで車体の傷が消えるのか、ということを全く紹介いたしません。デュラシャインやモーターアップなどは、胡散臭いながらも何となく科学的な根拠っぽい説明がされていたような記憶があるのですが、GT88については、そのような説明は一切無し。

 実はこの商品のカラクリ、《傷を修復して消す》というものではなく、樹脂のような成分で傷を埋めて目立たなくさせるだけ、というものなので、当然、洗車や雨風などで樹脂が取れてしまえば、また、傷は見えるようになってきてしまいます。しかも、結局は深い傷になると埋められないので傷は目立ったまま。《本当に消したい傷》には屁の役にも立たないのです。《本当に消したい傷》と言っても私が過去に犯した過ちのことではなく、車に付いてしまった傷のことですよ。
 そんなカラクリを知らずに、

 ジョン「どうだいニック。コイツを・・・こう・・すると・・・」
 ニック「ウワァーオゥ!!コイツはすげぇや!!ハッハーッ!!!」

 などと車の傷がみるみる消えていく様を見せつけられて注文先の電話番号にダイヤルしてしまった、そんな迷える子羊たちが相当数に上ったであろうことは、想像に難くありません。
 そもそも、海外のテレビ通販は買って楽しむものではなく見て楽しむものですから、そこは趣旨を間違えてはいけないのです。

 そんな数々のイカした商品たちも、大体、テレビで宣伝しなくなって数年が経つと、ホームセンターなどで数分の一の値段でたたき売りされていたわけですから、結局、どれもこれも、実態はその程度の商品だった、ということなのでしょうね。

 イカした商品
 イカれた商品

 一文字違うだけで全く別の商品に成り下がる、実は、彼らはそんな教訓を我々に与えてくれたのではないか、今となってはそんな風に思えてならないのです。

 さぁ、そんなワケですので、渋山さん(仮名)と例の三人組との関係は今後どうなっていくのか、そして、件の彼氏は彼女から一体なにをプレゼントしてもらうのか・・・私の与り知らないところで、それぞれの人間がそれぞれの人生を歩んでいくものなのだな、と、妙に感慨深く思ったのでした。やはり徹夜明けのアタマというのは、どこかオカシイですね。

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