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2012-12-22 部活魂

 交差点で信号待ちをしていると、前に立っていた大学生くらいのカップルの会話が耳に入ってきた。
 どうやら、期末試験の話をしているようである。
 冬休みが終わってすぐに試験が始まり、それが終わるとまた休みに入る。大学生は暢気でいいよな。おっと、私にも、そんな学生時代があったんだっけ…っていうか、いま、学生やってるじゃん。
 
 と、そんなことを考えていると、後ろから威勢の良い掛け声とともに、10人くらいの高校生が列をなして現れた。
 おそらく、近所にある高校のクラブ活動なのだろう。
 統制のとれたランニングというのは、見ていても心地がよい。
 彼らは、人ごみのなかを巧くすり抜けながら、ペースを緩めることなく、走り去っていった。
 
 すると、私の前にいたカップルの女のほうが、そんな彼らを見ながら思い出したように口を開いた。
 「ねぇねぇ、そういえば、ヨシくん(仮名)って高校時代ナニ部だったの?」

 彼女のその言葉が、私の脳裏に、中学生時代に流行っていた“あるやり取り”を蘇らせた。

  『ねぇ、ナニ部?』 『デブ』
  『ねぇ、ナニ部?』 『ちくわぶ』
  『ねぇ、ナニ部?』 『メガドライブ』

 私と同年代の方々にとっては馴染みの深いものであろうそんなセリフは、当然、相手の男の口からは発せられなかった。
 
 男は答えた。
 「オレぇ?山岳部ぅ」

 男の口調は、やけに誇らしげであった。
 “サンガクブ”という発音を“SANGAKUBU”と表記しそうな勢いだ。
 しかも、ちょっとヒップホップな感じ。

 いったい何がそんなに偉いんだコノヤロー、と言ってやろうと思ったが、私のようなデキた大人は、いちいちそのようなコトを口には出さない。

 きっと、今の回答で彼女のほうも、
 「なにコイツ?こんな男だとは思わなかった。もう別れよ。」
 と思ったはずである。ざまぁみろ。
 私は、そんな彼女に向かって
 『君の判断は賢明だ。君の後ろには、私がいる。振り返ってごらん?さぁ、そんな男は捨てて思いっきり私の胸へ飛び込んでおいで。』
 という念を投げかけた。
 これで貴様の女は俺のものだ。フハハハハッ!

 ところが、彼女は、
 「ウソー!?山岳部だったのぉー!?すごぉーい!!」
 と興奮し、大絶賛だったのだ。

 まさか“SANGAKUBU”に、これほどまでの過剰な反応を示すとは、さすがの私も、予想だにしなかった。

 彼女にとって、“山岳部”というものは非常にステータスの高いものらしい。
 仕方がない。今回は、私の負けだ。せいぜい、その彼女のことを大事にするんだな。


 彼女は続けた。

 「山岳部って、山に登ったりするの?」





 ・・・・あたりまえだろ。

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